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しまおまほ『はたらくおやつ』

今年3月、野鳩の合同公演シリーズ第2弾として上演された、野鳩 としまおまほ『はたらくおやつ』。原作を担当し、出演予定だったしまお。しかし、初日の本番直前にドクターストップがかかり、しまおは降板。代役を作・演出の水谷が全ステージで務めた。出演が果たせず千秋楽を観劇したしまおと、無事公演を終えた出演者(佐伯さち子、加瀬澤拓未、水谷圭一)が座談会で作品を振り返ります。
出産やGWで公開が遅くなりましたが、どうぞお読みください。

ゲネまでしまおさんと一緒に作ってきたのが、
なんだか夢・幻みたいだった

佐伯

水谷
偶然にも今日()は、作品の設定と同じ日。冒頭、朝礼のシーンで上原くんが「3月30日、月曜日」って言う台詞がある。劇中で(前の週の)週末のエピソードを語らせるために月曜日に設定しただけなので特に日付に意味はなかったんだけど。そんな日に振り返るっていう。

※この座談会は2015年3月30日(月)に行われた

上原

上原

しまお
結局私は降板してしまったから、終わった感がないんですよ、いまだ。
加瀬澤
逆に言えば「出たかった」って意識になってる?最初に「絶対に演技はしたくない」って言ったのに。
しまお
初日の開演直前、覚悟を決めた途端に出血してそのまま病院へ。だから拍子抜けしてしまったというのが本音かな。きっと出たら出たできつかったとは思うけど。あのまま、体調が持っていたとしても。
水谷
客観的に本番を観てみて「私、あんなのに出るはずだったの?」っていうのはなかったの(笑)?
しまお
出たかったという気持ちと、わたしが演技したらどんな結果だったかな、という空恐ろしい気持ちと。
加瀬澤
徐々に役者魂みたいなのが芽生えてきたのかなって思ったんですけど(笑)、違う?
しまお
ハハハ。でも最終日「こんにちは赤ちゃん」を唄わせてもらったのはいい思い出になりました。
佐伯
私、うしろで泣いてましたよ。楽日で疲れ切っていたのもあってすごい心に沁みました。
水谷
いいムードだったよね。舞台上で、白い椅子にちょこんと座ったしまおさんが唄っているという図が。やっぱりしまおさんも感動してたの?
しまお
はい。会場がすごく優しい雰囲気に包まれていて。でも、絶対泣いたらダメだって。本編出ていないくせに、最後の最後だけ出てきて泣くなんて、かっこ悪いでしょう。野鳩のみんなからすれば「こっちは大変だったんだから」じゃないですか。だからこそ「出たかった。みんなで気持ちよく終わりたかったなあ」って気分になったんですが。
佐伯
初日で突然いつもの野鳩メンバーだけに戻ったわけで、ゲネまでしまおさんと一緒に作ってきたのが、なんだか夢・幻みたいで。
水谷
「鶴の恩返し」みたいに小道具だけ作り上げて姿を消した……みたいな。かなり突然だったし「嘘じゃないか」って思った人もいたみたいだからね。

しまおが作り上げた小道具

しまお
後から「体調不良」じゃなくて、正直に「切迫早産により」ってアナウンスしたほうが良かったのかなとは思いましたけど。
佐伯
その時点じゃ言えませんもんね……。
加瀬澤
それにしても「切迫早産」ということばが怖いよね。
佐伯
もう危機は脱したんですよね?
しまお
はい。でも、続けざまに「いぼ痔」というピンチが……。まさにその感動の最終日の夜に、プチトマト大の痔が……。
水谷
えっ、感動的な雰囲気の中、あの白い椅子に染みてたとか?
しまお
あの時はまだ(笑)。家に帰ってから鏡で見て「うわ」って。夫が「写メ撮ってあげようか?」って言ってたけど「絶対いやだ」と。まあ、いぼ痔って、"妊婦あるある"らしいんだけど。

誰にスポットライトを当てるわけでもない
フラットな群像劇にしたかった

水谷

水谷
切迫早産で「出られない」ってわかった時、どんな気持ちだったの? 俺は冷静だったんですけど。「あー、やるしかないな」って。
しまお
ただただ申し訳なくて、悔して。せめて何日か出演できていたなら……。
一方で、代役の水谷さんの演技を見て「あれが正解だったのか」って思いました。稽古中は演技指導されても自分に演技の引き出しがなくてまったくつかめてなかったんですよね。
水谷
いや、あれはしまおさんにとっての正解じゃなくて、代役としての正解なんだよね。しまおさんの物まねというか、理想のしまお像というか。
事前に「私は演技しない!」って宣言されちゃってたから。しまおさんのアドリブ演技に台本があったら、っていう体で。
でも、何件か「あの人がまほちゃんに見えてきた」って口コミ見たよ。「あの人」って……。
しまお
あの目配せとか、どこかはぐらかしている雰囲気が似ていたのかな。「私、ああいうふうに見えているんだ……」って思ってちょっとフクザツでした(笑)。
水谷
で、一番悩んだのは、ラストの「こんにちは赤ちゃん」。どんな感じで唄えばいいんだろうって。でもきっと、現実のしまおさんに向けて唄うんだろうなって。そうなると本来の意味とは違ってきちゃうんだろうけど。

水谷

水谷

佐伯
幸い、最終日しまおさんも観に来れたわけじゃないですか。あんまりない状況ですよね。
水谷
周りには自分のことを観に来たであろうって人に囲まれてね。
しまお
そこはそんなに気にならなかったです。すごく集中して観ていました。佐伯さん演じる高無さんが彼氏に妊娠を告白するシーンとか感動しちゃってウルウルしていました。
水谷
えっ、稽古で全部のシーンわかってるじゃないですか。
しまお
一週間くらい離れていたので、客観的に見られたのかな。だからどんな作品よりも今の自分にハマっている芝居を観に来た感じでした。
自分の原作なんだから当たり前なんだけど。
佐伯
ラストはギリギリまで決まっていませんでしたしね。
水谷
いろいろ着地しないで終わらせる初めての試みでした。まぁ、「しまおさんがママになる」という事実が軸にあるし。そこを大事にして。
しまお
私が実際に出ていたらどうなっていたんだろうとは思います。稽古はパーツパーツでやるじゃないですか。だから、全体像は把握できていなくて、実際、ラストまで通して見るっていうのも初めてで。「こんなにまとまるんだ」って感心しました(笑)。
水谷
そりゃ、まとまるように作ってますもん(笑)。自分の頭の中に一応完成図はあるし。
しまお
ドキドキしていたんです。「私と組んだことによって、今回失敗しちゃうんじゃないかな」なんて。
水谷
何回公演やっても本番来ないと出来はわからないんですよね。特に野鳩は毎回スタイルを変えているから。
佐伯
正直言うと「面白くないかも」って思ってました。でも、やってみたらお客さんの反応良かったし、やってみないとわからないものだなあと。
しまお
面白くないとは思っていないけど、自信のなさの極地で、わたしも不安でいっぱいでした。
水谷
作る方が自信なさを露呈しちゃ終わりだからね。自分の魔法が解けないように気持ちを高めてやってました(笑)。
佐伯
今回はひとことで言えば「結果オーライ」。いろいろ不安な要素はあったけど、意外と好評だった。日々の努力の賜物かもしれないけど。貴重な体験でした。
加瀬澤
僕も同じ。初日の後は「楽しんでもらえるようだ」ホッとしましたが、それまで全然自信持てませんでした。杏子のメイクには自信ありましたけど(笑)。

加瀬澤

加瀬澤

しまお
見終わっても、二役(杏子/高無さんの彼氏役)って気付いていない人いましたからね。
水谷
「彼氏役の人、やけに出番少ないな」って思われたんだろうね(笑)。
佐伯
カーテンコールには出てこないし(笑)。
水谷
それにしても加瀬澤くんは完全に女装にハマってたね。楽屋で鏡見ながら口紅塗って、ンパンパってして「キレイ……」って思ってる顔してたから(笑)。
俺なんて、佐々木さんにメイクしてもらうたび鏡見て「ブスだなー」って思ってたのに。

佐々木

佐々木

加瀬澤
僕はアイメイクだけ佐々木さんにやってもらって、あとは自分で。二役で早着替えしてたんだけど、口紅だけ落として、アイメイクはサングラスで隠すという、システマチックな舞台裏でした。
しまお
加瀬澤さんの中森明菜最高でしたね。

加瀬澤

水谷
加瀬澤くんは今回演技どんどん変えてたもんね。黙認してたけど。佐伯が唄う「星間飛行」の手拍子も変えるし。「星間飛行」と言えば、終わってから気付いたんだけど、かせきさいだぁさんがカバーしてたんだね。高無さんはもともと「アニメ声キャラ」という設定で、なんとなく曲を選んだだけなんだけど、知らず知らずのうちに不思議とリンクしてた。
しまお
あとは、「高無さんのあのおっぱい本物?」ってみんな思っていたみたいね。
水谷
3日目のアフタートークでそのことについて話したけど、島尾伸三さん()は偽物だって見抜いてた。それと伸三さんが「(まほが)これまで散々遊び呆けてきたのは無駄じゃなかったと思いました」的なことをおっしゃってたんだけど、ホント面白いよね。脚本についても「若いのにちゃんと世の中を観察できている」って。僕たちそんなに若くないんですけど(笑)。
※しまおの父
しまお
お父さんに見てもらえたのは、本当に良かった。それにしても、高無さんはキャラ立っていましたね。

佐伯

佐伯

水谷
実は、そこは今回の反省点の一つで。前半は誰にスポットライトを当てるわけでもないフラットな群像劇で、そこから最終的に高無さんがひょっこり浮かび上がってくるかたちにしたかったんだけど。
しまお
脚本については稽古中、何度もミーティングして練り上げていった甲斐がありますね。
佐伯
普通は、稽古中ミーティングあんまりしないんですけどね。
水谷
一人の人間が考えるモノってたかが知れてると思うんですよ。小さくまとまっちゃうというか。それで野鳩ではみんなからネタ出ししてもらって、それを僕がふるいにかけてまとめる方式を採用してるんだけど。しまおさん原作、というかネタ出しの今回も例外ではなくて。稽古終わりの22時からミーティングするのは当然不満が出て大変だったけど(笑)。
しまお
わたしはその時期ハマってたドリアをミーティングで食べるのが楽しみでした。

濱津さん、彼女いるのかな?
しまお

加瀬澤
ネタ出しのミーティング大変でしたよ。ネタと言えば、しまおさんが作ってきた「金玉大作戦()」やりたかったんですけど。
※「野鳩としまおまほができるまで」の「原作ボツ原稿!」コーナー参照
水谷
加瀬澤くん、「金玉大作戦」お気に入りだったね。
しまお
意外と加瀬澤さんが俗っぽいネタに反応するんですよ(笑)。一方、水谷さんは思慮深い。
水谷
加瀬澤くんとは真逆の意見になることが多いよね。
最初、しまおさんの断片的な原作を『パルプフィクション』みたいな構成にしていけばいいんじゃないかって考えて。そうすると一人何役かすることになる。まずは、加瀬澤くん二役お願い、みたいな流れでした。
でも、脚本を書いていくうちに『パルプフィクション』は無理だなと。散漫になるから舞台には合わない。
じゃあ、新人が入社して、妊婦が退職するっていう「職場の一日」をベースにしようと。そこに回想を挿入して観客に神の視点を与えることによって、何気ない会社の風景が多面的に見えたらいいなって。流れに変化が出て、興味の持続にもなるし。
しまお
そうなってから、配役が決まっていきましたね。雪港さんの課長はすぐ決まって。

雪港

雪港

水谷
しまおさんは最終的にそのまま妊婦の役になったわけだけど、それまでは太った人の役とか力士とか、シーンが変わるたび必ずそこに巨漢がいるという案も出て。
しまお
濱津さんの曽松役も輝いていましたね。スター性がありました。彼はあんなキャラを演じていましたが、水谷さんの求めていることを忠実に返していて、勘の良い人だなと思いました。
水谷
俺の演出初めて受けるのにちゃんとできてたからね。後から思えば、稽古の時彼の演技の細かいことが気になるレベルだったんで。だからそれ以外はちゃんとできてたっていう。

雪港

佐伯
マンガ家の本秀康さんが「顔が完全に六頭博士()の人がいた」と呟いていましたが、濱津さんは酔っ払うともっとそっくりになるんですよ。
※本秀康さんの漫画「アーノルド」の主要キャラクター
しまお
濱津さん、彼女いるのかな?

濱津

濱津

佐伯
それは結局最後まで聞けなかったんです。
しまお
劇団の人たちがお互いのこと結構知らなくて意外でした。演劇ってもっと濃密な人間関係かと思っていたので。
加瀬澤
普段遊んだりしないからね。
水谷
オフでは連絡すら取らないよ。
佐伯
年間で関わる時間が長いですからね。だからこそオンオフのメリハリが大切で。
しまお
そんなもんなんだ。
ところで、そもそもなんですけど、劇団にいきなり私という門外漢が入ってきてなんだよって思ったりはなかったんですか(笑)?
加瀬澤
いやいや、出てきたものをキャッハキャッハやっていた感じですよ。
佐伯
そうですね。むしろ、どんなのができるのか未知数で出たとこ勝負だから必死でした。逆に「妊婦だから」という理由では気を遣っていましたけど。
しまお
まとめっぽいこと言いますと、普段から舞台を観てこそいましたが、作る側に回るのは初めてで、かといって「私ならこんな舞台を作る」みたいな気負いというか野望も特になかったんですね。
すごくおもしろくなくても、メリハリがなくても良いと思っていて、ただ一点「自分ぽいもの」ができれば本望かな、くらい。でも、その肝心の「自分ぽさ」が見えていなかったのを、水谷さんがうまく誘導して仕上げてくれて感謝しています。
水谷
映画のチケットのシーンなんてその真骨頂だったね。逆に、電マのシーンはしまおさんぽくないかもしれないけど(笑)。

電マのシーン

しまお
あの自作した電マ、思い出にもらおうかなって思って(笑)。
水谷
出産の時、握ってれば(笑)?
しまお
今回「野鳩」の舞台を初めて観て面白かった人は、また観に来て欲しい。今後の予定は?
水谷
九月下旬を予定しています。また全然違うことをすると思うので、ご期待ください。
しまお
演劇って一回観ると、次が行きやすくなりますよね。
水谷
そう言ってもらえるといろいろ助かります(笑)。演劇って基本見逃したらもう二度と体験できないので。だから、劇団からすれば「観ればよかった」という言葉が一番つらいんです。

『はたらくおやつ』

(2015年03月30日 喫茶室ルノアール〈新宿大ガード横店〉にて)
協力・デザイン: 勝又啓太

ということで、野鳩の次回公演を見逃したくない方は「公演情報メールサービス」にぜひご登録ください。方法はカンタン。件名に「DM希望」と入力して、info@nobato.netに送信するだけ。野鳩からの返信で登録完了です。

公演によっては先行予約などメールサービス限定の特典もあります。配信タイミングもチケット発売前など年に2、3回。忘れた頃に届きます。野鳩の次回公演は、2015年9月23日(水・祝)~27日(日)です。登録してお待ちください。

※Gmailの方は迷惑メールフォルダに返信メールが届く場合があります。ご注意下さい。(Gmailの迷惑メールフィルタを無効にする方法はコチラ

『はたらくおやつ』

『はたらくおやつ』

『はたらくおやつ』