野鳩

解散によせて

すでにご存知かと思いますが、今回の公演をもって野鳩は解散することになりました。 2001年から始めて、15年。ついに最後の公演です。

解散の理由は、シンプルに言えば「劇団の寿命がきた」ということになります。延命して活動を継続することも考えましたが、多分長くは続かないことは容易に想像できました。活動休止も経験してますし、仮にまた同じ状態になってもおそらくいいことはないはず。だったらちゃんと解散しよう、という結論に至りました。

実は、解散文を書くのは野鳩を始めてから今回で三度目です。一度目は活動休止中。これはナカゴーと出会って合同公演をすることになり、世に出す必要がなくなりました。二度目は、ナカゴーとの合同公演のあと。再開はしたけど永続的な活動は難しいなと感じて書いたんだと思いますが、これも佐伯を中心とするメンバーの協力があり、世に出す必要がなくなりました。そして、三度目が今回です。

解散が一度目や二度目に文章を書いたときでなくて、本当によかったと思います。タイミングは悪くないので、あとはベストを尽くすだけです。解散公演のタイトルはそのまま『野鳩』。今までやってきたことや、やれなかったことを可能な限り盛り込んだ最高に楽しい公演にしたいと思います。

最後までどうぞよろしくお願いします。

野鳩 水谷圭一

野鳩 -解散公演-
野鳩

第26回下北沢演劇祭参加作品

作・演出 水谷圭一

野鳩 -解散公演-『野鳩』チラシ

2001年から始めて、ちょうど15年。
活動休止などありましたが、これが本当に最後の公演です。
最後にしてやっとフルメンバー。ついに野鳩が全員揃いました。
なので公演タイトルも『野鳩』。
集大成になるような、劇団の最後にふさわしい作品を目指します。
今まで観たことない方も、1度観てハマらなかった方も、 最近観てない方も、いつもご覧頂いていた方も、 なにぶん最後ですので、見届けて頂けたらと思います。
たったの4日間で終わります。お見逃しのないよう。
劇場でお待ちしています。

水谷圭一

出演

  • 佐伯さち子
  • すがやかずみ
  • 佐々木幸子
  • ワタナベミノリ
  • 村井亮介
  • 濱津隆之
  • 矢野昌幸
  • 滑川喬樹
  • 佐竹奈々
  • 堀口聡

スタッフ

  • [照明] 増田純一 しもだめぐみ
  • [音響] 池田野歩
  • [小道具製作] 中島香奈子 當間英之
  • [宣伝美術] 水谷圭一
  • [web] 勝又啓太
  • [当日運営] 宍戸円

協力

  • 羊-hitsuji-
  • ECHOES
  • SMA
  • e+(イープラス)
  • 少年王者舘
  • ナカゴー
  • 東京ELECTROCK STAIRS
  • 天久聖一
  • しまおまほ
  • 九龍ジョー
  • うにたもみいち
  • 佐々木敦
  • KENTARO!!
  • 天野天街
  • 鎌田順也

企画・製作

野鳩(お問い合わせ: info★nobato.net)※★を@に変えて送付ください。

会場

下北沢 駅前劇場

小田急線・京王井の頭線「下北沢駅」南口すぐ。

  • 東京都世田谷区北沢2-11-8 TAROビル3F
  • 03-3414-0019

チケット

タイムテーブル

2/25(木) 2/26(金) 2/27(土) 2/28(日)
14:00
15:00
19:00
19:30
  • ★……終演後トーク開催
  • ☆……開演前ムービー上映&解散カーテンコール
  • 開場は開演の30分前。
  • 受付開始、当日券・グッズの販売は開演の60分前。
  • 整理番号は前売の受付順です。
  • 前売は公演前日24:00までの受付です。
  • 未就学のお子様はご入場頂けません。

アフタートークゲスト

25日(木)19:30
しまおまほ(エッセイスト)& 島尾伸三(写真家)
26日(金)19:30
九龍ジョー(ライター、編集者)& 黒岡まさひろ(ホライズン山下宅配便)
27日(土)19:00
うにたもみいち(演劇エッセイスト)& 鎌田順也(ナカゴー)

料金

全席自由・整理番号付

前売3,000円
当日3,500円
はじめて割2,000円(野鳩のみ取扱)※野鳩の舞台をはじめてご覧になる方のみ
リピーター割1,000円(予約不要)※受付にて本公演の半券提示or予約メール提示
  • 入場はリピーター以外の料金の方が優先されます。混雑状況によっては、入場を制限する場合もありますのでご了承ください。
  • 当日券の有無はTwitterにてご確認下さい。

チケット取扱い

  • e+(イープラス) http://eplus.jp(パソコン・携帯)
  • 野鳩

一般発売日

  • 2016年1月24日(日)12:00~
  • e+(イープラス)、野鳩

先行販売受付期間【e+(イープラス)のみ】

  • 2016年1月10日(日)12:00~17日(日)23:59
  • 先行特別価格 2,800円(手数料無料)+先行特典:オリジナル手ぬぐい(イラスト:天久聖一)
    ※整理番号は先着順です(一般とは別の優先番号です)
    ※特典の手ぬぐいは、その他のグッズと共に会場で販売されます。

先行販売は終了しました

野鳩
野鳩プロフィール

2001年、水谷圭一、佐伯さち子を中心に結成。

水谷が全作品の脚本と演出を務め、
中学生の「すこしふしぎ」な恋愛物語を記号的演技・
マンガ的世界観で上演する独自のスタイルで活動開始。
一部の小劇場マニアから熱列な支持を得るも、2007年活動休止。

6年間の活動休止を経て、2013年ナカゴーとの合同公演にて活動を再開する。

再始動後の公演では、
出演者が効果音を演奏することで舞台上にないものを「見せる」演劇、
古民家の特性を生かし家屋全体を舞台にした不条理劇、
しまおまほを原作に迎えた合同公演などを精力的に上演。
細やかな演技演出を特徴に、以前の作品スタイルに捕われない毎回異なった切り口で公演を重ねる。

2015年12月1日、オフィシャルサイトにて
『野鳩』(第26回下北沢演劇祭参加作品)の上演をもって解散することを発表した。

メンバーは、水谷圭一、佐伯さち子、すがやかずみ、佐々木幸子、ワタナベミノリ、村井亮介。

コメント

え?解散すんの?まあ、でも主宰の水谷君はまたなんかやるんだろうし、魅力的な役者さんたちはきっとほかでも輝けると思いますので、皆さんの今後を楽しみにしてます。とりあえず解散おめでとう!

天久聖一(漫画家)

えーホントに終わり?勿体無い。面白かったのに!

まさかわたしの公演がキッカケじゃあないですよね?

辞めないでよー。続けなよー。

しまおまほ(エッセイスト)

野鳩よ、永遠に(≧∇≦)。ユモレスタ!

九龍ジョー(ライター、編集者)

『青少年の怨み~飛べ!カブトガニ~』を見て「極北の演劇」だと思った。あの頃、知る人ぞ知る劇団だった野鳩が、15年の歳月を経て、知る人ぞ知る劇団のまま解散する。知る人ぞ知る解散だ。2001年以来彼らをずっと見続けて来た私も、知る人ぞ知る「知る人」でありたい。

うにたもみいち(演劇エッセイスト)

私は復活後からの、ごくニワカの野鳩ファンに過ぎない。だが、脱力と淡々とほっこりの裏に隠された、厳密と偏執と戦慄にいつも魅せられてきた。手を替え品を替え、しかし舞台上の空気感は見事なまでに一貫させつつ、物語ないし物語ることへの憧れと疑いを、野鳩は繰り返し考えているのだと思う。

佐々木敦(評論家)

最初に観た時、不思議な郷愁が残り、その記憶をたよりに復活した野鳩を観に行ったら別物になってた。その後観た幾つかの作品も感触的なユーモアは維持されつつ掴み所のないものだった。その変化を郷愁以上に楽しんでいただけに解散してしまうのは寂しいけど、また新たな物語が立ち上がるのを楽しみに。

KENTARO!!(東京ELECTROCK STAIRS)

野鳩、再結成を寿いで。

永い永い休憩を終え、野鳩が遂に始動する。休みの間、貯めに貯めた膨大なアイデアの数々、山の幸、町の幸、空の幸(カイサン物以外)を、物語にテンコ盛りした、いまだかつて観たことのない野鳩の現在形が明らかになる時がやって来たのだ。いま僕の期待は、臨界に達している。

天野天街(少年王者舘)

ぼくにとって野鳩は一番面白くて一番かっこいい劇団です。解散するのはさびしいですが、新作がみれるだけでも、とても、うれしいので、とりあえず野鳩のみなさま、新作作るのがんばってください。そして、野鳩ファンの方、まだ、見たことない方、絶対いきましょう。

鎌田順也(ナカゴー)

アーカイブス

公演履歴(解説: 水谷)

会場で販売された「野鳩新聞」(しまおまほ責任編集)に掲載されるはずだった水谷による全作品解説です。

野鳩 第1回 公演『極上の孫』

  • 2001年5月30日(水)〈全1ステージ〉
  • スタジオあくとれ

野鳩の旗揚げ公演です。記念すべき第1回目なのに平日。しかも1ステージのみという。当時のメンバーはほぼ大阪芸大の同期生。東京の知り合いも少なく集客が絶望的だったので、しょうがないですけど。主人公の男の子が実家の町工場の産業用ロボットに恋してしまう。男の子にはロボットが女性に見えるんだけど、実際は『わたしは真悟』のモンローまんまのビジュアルで。最終的に、二人はセックスして出産までします。中学生とロボットなのに。全篇東北弁のような訛りで語られ、少し暗めの作品だった気がします。個人的な思い出としては、役者として出演もしてたんですけど、演出に手いっぱいで自分の稽古を全然してなくて。暗転中に舞台上の布団で寝てなきゃいけないシーンがあったんだけど、本番では楽屋でボーッっと一息ついてしまって。「ハッ」と気づいて、暗闇のなか急いで舞台に戻って事なきを得たという。よく間に合ったなーと思います。あとこの頃ワープロで台本書いてたんですけど、公演が終わると同時に壊れて。機械の死に立ち会って公演が終わるという、感動的なんだかよく分からない終わりでした。当時23歳。みんな若かった。

野鳩 第2回 公演『青少年の怨み~飛べ!カブトガニ~』

  • 2001年11月17日(土)・18日(日)〈全2ステージ〉
  • アートスペースプロット

2回目にしてネタが尽きて「1本のお芝居できないよ」ってなって。じゃあオムニバスコントにしようと始まったんだけど、内部的に「これじゃダメだ」の声が上がって。それなら、何個か書いてたコントの内の1本を元にしてお芝居にしようって。すでに告知も終わっていて、方向転換が決まったのが本番1ヶ月前。結構ドキドキしてました。ある日パラレルワールドの存在に気づいた少年が、もう一人の自分とお互いの世界を行き来する物語。藤子・F・不二雄のSF短編『ふたりぼっち』のほぼまんまです。ただし、原作は空間に出来た穴を通って世界を渡るんだけど、野鳩版はオナニーをするとパラレルワールドに飛んでしまうという設定。その自慰行為の表現がまんまやるとアレなんで、少年の胸元に作り物のカブトガニを付けといて、それを手でこすって「ぅっ、うわああ~」とか言うことで表現するという。それがタイトルの「飛べ!カブトガニ」の部分(あとづけ)。あと、初めて雑誌に取り上げられた公演でした。記事を書いてくれたのは、うにたもみいちさん。今でもお世話になっております。その時書かれた「藤子不二雄のFとAのコンビを方法論的に演劇上で復活させる試み」という評論が、のちの野鳩の方向性を決定づけます。学生時代から憧れていたうにたさんに褒められて、演劇ぶっくが届いた当日は何度もニヤニヤして読んだものです。

野鳩 第3回 公演『なんとなくクレアラシル』

  • 2002年11月3日(日)・4日(祝)〈全3ステージ〉
  • アートスペースプロット

先の劇評を受けて、「じゃあ藤子不二雄的演劇を推し進めたらどうなるか?」を実践した公演。いじめられっこでニキビ面の少年が、泉にクレアラシルを落とすと女神が現れて、という話。きれいなジャイアンが登場する、ドラえもん『きこりの泉』を下敷きに、中学生の欲望を描いた初期代表作です。雑誌に取り上げられた影響もあって、ちょっと動員が増えた公演でした。シベリア少女鉄道の土屋さんと藤原くんとかも観に来てくれて。前回公演時、面識のない土屋さんの実家にいきなり電話して「観に来てください」って言ったら「行けたら行きます」的な言葉で濁されて。全然知らないやつから誘われたんだから、当たり前の反応ですけど。前回観に来てもらえなかったことを考えれば、大きな進歩です。オリジナルの方言、中学生、記号的演技演出、など初期野鳩スタイルを構成する要素がすべて出揃ったのもこの公演でした。客席からの笑い声も、質・量ともに今までと違って「ウケてる……」と感動したような気がします。いっぱい褒められてホックホクな状態で終わった公演でした。

野鳩 第4回 公演『ドリームズ カム トゥルー』

  • 2003年4月29日(祝)・30日(水)〈全3ステージ〉
  • 王子小劇場

王子小劇場から「平日でよければ、どう?」って感じで誘われて。当時、王子小劇場といえば、ポツドールとシベリア少女鉄道という、自分の中の三大おもしろ劇団のうちの2劇団が話題作を連発していた時期(ちなみにあとのひとつはゴキブリコンビナートですが)。少女まんが好きの女の子が犬を拾うと、それは飼い主に思い通りの夢を見させる不思議な力を持つ犬だった、みたいな話。なんですけど、失敗した公演でしたねぇ……。雰囲気を変えようと女性を主人公にしたら、筆も乗らず、全ての配役バランスが崩れて散々な感じに。悪いことは重なるもので、場当たり(音響・照明などを含めた段取り確認)中に機材トラブルが起きたんだけど、劇場スタッフが長時間不在で全く何もできなくなるという。結局、初日前日はほぼ徹夜で場当たりして全員ぐったりした感じで本番を迎えました。前回と打って変わって客席も、とっても冷ややか。もう本当に死にたいくらいの気持ちになって、劇場からの帰り道はわざと車道寄りに歩いて「車に轢かれちゃえ」とか思ってました。

野鳩 第5回 公演『ひとめぼれ』

  • 2003年11月14日(金)~16日(日)〈全5ステージ〉
  • アートスペースプロット

回を重ねるごとにメンバーも辞めていったりして、いよいよ主役ができる人が居なくなってしまったので、シベリアの藤原くんに客演をお願いした公演。呪われた村を舞台に、岩の中に閉じ込められた怪物の出自の謎が、村長の過去と結びついて、みたいな話。とにかく台本がまったく書けないまま初日が近づいて、どんどん精神的に追い込まれて。そんな中、出演者同士が「公演終わったら付き合います!」とか宣言しだして稽古がすげえやりづらい雰囲気になったり。そのことに腹立ててたら「水谷くん、その子のこと好きだったんじゃないの?」って勝手に決めつけられてまた腹立てたり。この舞台、「呪い劇」って謳ってたんだけど、「ほんとに呪われてるのかな?」って思ってました。でもディテールには結構こだわってて。漫画家の堀くんが出演してくれたんだけど、当時アフロだった堀くんの頭に斧が刺さったり、それがきっかけで双頭になったり。冒頭の嵐のシーンもかっこよかったし。ただ、過去の公演の焼き直し感も否めず……。本当にドツボの時期でした。

野鳩 第6回 公演『ぜったいあの娘はボク専用』

  • 2004年4月22日(木)~25日(日)〈全7ステージ〉
  • アートスペースプロット

イマイチな公演が続いてしまって、どうしようかと思っていたら辞めた役者が戻ってきてくれて。ちょっと変化球が続いたんで、ここは一丁得意のラブコメで、って公演。好きな子に告白できないままダンプカーに轢かれて死んでしまった男の子が、神様に一日だけ猶予をもらって好きな子に告白する話。書き割りのデカいダンプカーが舞台袖から登場したり、跳ねられた主人公が人形になって吹っ飛んだり。キャッチーな部分もあるけど、主人公は結局死んでしまうからラストも甘くなくてなかなか切ない。客入れに流してた安全地帯のベストもいい感じにダサカッコよくて、久々に納得のいく公演ができた気がします。うまくいかない公演が続いていたので、この公演も失敗だったらもう演劇辞めよう、と思ってました。
で、このあとガーディアン・ガーデン演劇フェスティバルに出場するために応募するんですよ。審査員にうにたさんが居て、続々と話題の劇団が輩出されて。この演劇フェス本当に大好きでした。観客を入れた劇場でプレゼンして、審査過程をすべて公開して行われる二次審査が最高にスリリングで刺激的で。ポツドールや毛皮族といった人気劇団がプレゼン内容次第で落選するシビアさ。野鳩は事前リサーチの元、盤石の体制で挑んで満場一致で出場権を獲得しました。この時のみんなの高揚感と一体感、今でも思い出せるなぁ。当時は今以上にメンバーの野鳩に対する他人事感が強かったんだけど、この時ばかりはそうではなかった。こんなフェスがあったり、こんな体験ができたり、いろいろな意味でいい時代でした。

野鳩 第7回 公演『きみとならんで空の下』

  • アリスフェスティバル2004参加作品
  • 2004年10月16日(土)~18日(月)〈全5ステージ〉
  • タイニイアリス

今はなき新宿タイニイアリスでの初めての公演。劇場主の西村さんには本当に良くしてもらいました。コンプレックスに思ってる顔のホクロから、ホクロの権化が現れて主人公の欲望を実現する、みたいな話。出演者そっくりの人形を何体も作って人形劇したり、主人公が『アキラ』の鉄雄みたいに巨大化したり。今では考えられないけど、美術や小道具がどんどん大がかりになってますね。この公演で初めて音響をプロ(みたいな人)に依頼したんだけど、ちゃんと選曲してくれないわ、センス合わないわで結局手持ちの曲で全部選び直したり。照明も大学の後輩がやってくれたんだけど「ぼくは前明かりを極力使わないようにしています」っていう変わったポリシー持った人で全部作り直してもらったり。そんなんだから初日の幕開けがうまくいかず、本番を途中で止めて3回くらいやり直したり。本番を止めたのは後にも先にもこの時のみ。やり直しばかりの公演でした。

野鳩 第8回 公演『お花畑でつかまえて…』

  • 第14回ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバル参加作品
  • 東京公演
    • 2005年3月4日(金)~6日(日)〈全5ステージ〉
    • スフィアメックス
  • 神戸公演
    • 2005年5月14日(土)・15日(日)〈全3ステージ〉
    • 神戸アートビレッジセンター

GGフェス参加作品。男の子が朝起きたら女の子なってて、ひょんなことから片思いの子と親友になってしまって、という話。東京公演では村井くんが出れなくて、ぼくが代わりに出演。セリフが覚えられないので全部録音したものを流して身振り手振りで演じました。手前味噌ですがラストシーンの花畑は圧巻。暗転明けに出てくるのが分かってても毎回鳥肌立ってました。初めての地方公演の神戸はすごい緊張したけど、フタを開けてみるとものすごいウケて拍子抜け。東京のお客さんより全然温かかった。このあと約一年活動を小休止してますね。いろいろあったんだろうな。特に気負いはなかったけど、終わってみると非常に評価が高く代表作になりました。

野鳩 第9回 公演『僕のハートを傷つけないで!』

  • アリスフェスティバル2005参加作品
  • 2006年2月4日(土)~7日(火)〈全6ステージ〉
  • タイニイアリス

ここから一年の間に5公演する、その1本目。漫画家を志す二人の少年が交通事故にあって合体。一人が、もう一人の右手と合体してしまう。野鳩版『まんが道』+『寄生獣』。元々、ネタ出し会議の時に『寄生獣』を舞台化するならどうやるか、っていう話をしてて。右手の形した着ぐるみに人が入ってミギーになって、二人の役者でやったら面白いよねって冗談で言ってたのを本当にやってみたっていう。舞台美術は『まんが道』の絵をそのまま拡大した書き割りを作ってシーン毎に舞台上に出す方式。ぼくも藤子A先生役で出演。コスプレする人の気持ちがちょっとだけ分かった気がしました。なぜか、この公演から異常に動員が上がって連日満員。バブル到来。ちなみにナカゴーの鎌田くんが最初に観た野鳩作品がこれです。個人的にも気に入っている作品のひとつ。最近映像で観返したら超面白かったです。

野鳩 第10回 記念公演『なんとなくクレアラシル(愛蔵版)』

  • 2006年4月15日(土)~23日(日)〈全12ステージ〉
  • こまばアゴラ劇場

初の再演。チラシは天久聖一さんに描いてもらいました。初演の時よりメンバーが増えたので二つの役をトリプルキャストで。ステージ数、最多。観客動員数も野鳩史上最多。この頃来て頂いたお客さん、今はどこへ行ってしまったのでしょうか。この公演、実は公演中止の回が出るかもしれない危機がありました。当時劇団員だった堀口くんが就職の研修期間でどうしても平日昼の回に出演できない、「公演中止にしてください」と劇場入りしてから言われて。無理だって言ったんだけど、当日、本当に劇場に来ないからみんなで大慌て。とりあえず数名で研修施設に出動。ぼくが堀口くんの弟という設定で「おじいちゃんが倒れて瀕死の状態」って大嘘ついて。受付のガードが意外に厳しくて、来館票になかなか嘘が書けずにすごい焦ったけど、必死に訴えてたらしぶしぶ入れてくれて。それ以降は即興コントの様相。担当の人に掛け合って必死のアピール。うなだれて落ち込んだふりしてたら、堀口くんがそっと肩に手を置いてくれました。時間はかかったけどなんとか堀口くんを連れ出し、アゴラ劇場へ。着いた頃にはすでに開場していて開演直前。楽屋からそのまま駆け上げるように舞台に出たという、本当にあった怖い話。その後、堀口くんは無事就職し、野鳩を退団。トラブルがのちに笑い話になる最高の例。

野鳩 第11回 公演『アイム・ノット・イン・ラブ』

  • 2006年10月25日(水)~29日(日)〈全7ステージ〉
  • ウエストエンドスタジオ

次がフジテレビのイベント、その次が駅前劇場で公演、と表向きには順調に見えてた頃。母親とまだ見ぬ恋人を探して旅する三兄弟が、ある村で三姉妹と出会う物語。緑が広がり、舞台を横断するように川が流れ、それをまたぐように太鼓橋がかかり、着ぐるみの牛が草を食む。ラスト、雨上がりに虹がかかるという集大成のような舞台美術。登場人物は学ランや制服は着ているものの、もはや中学生という設定は抽象化され、前期フォーマットからの脱却の兆しが見えます。公演直前に佐伯が入院。出演できるか確定できないまま稽古に入ったため、病気で家に籠っている設定にして、出番も少なめに調整しました。順調そうな表向きとは裏腹に、精神的に疲弊しまくって相当無理してた時期。この辺りから劇団崩壊の足音が聞こえていたと思います。

野鳩×里中あや『ぜったいあの娘はボク専用(愛蔵版)』

  • お台場SHOW-GEKI城参加作品
  • 2006年12月22日(金)~28日(木)〈全7ステージ〉
  • フジテレビメディアタワー・マルチシアター

フジテレビ内の施設・マルチシアターで、劇団とアイドルにタッグを組ませて公演する「お台場SHOW-GEKI城」という企画の参加作品。参加団体は、ヨーロッパ企画、ロリータ男爵、エッヘ、毛皮族、少年社中、MCR、はえぎわ、野鳩、宇宙レコード、ピチチ5、シベリア少女鉄道。参加団体からことごとく評判が悪かった企画。よかったという声を聞いたことがない。個人的にも散々な目にあった公演。アイドルの子やファンはすごくいい人だったけど、マネージャーが最悪。本当に最悪。常に高圧的で非協力的。懇親会をマネージャー込みで開こうとしたら「必要ない、そんなひまあったら稽古しろ」と言われたり。向こうのミスをなすりつけられてこっちのせいにされたり。毎日稽古場についてるくせに企画のプロデューサーが来ると雲隠れ。この頃、事務所のトップだった吉岡美穂がIZAMとデキ婚しちゃったんでガードが固かったんだろうと想像はつくけど、何もしてないのにまるで泥棒扱い。本当にひどかった。この一件で本当に疲れ切っていよいよやる気をなくし、野鳩は活動休止へと向かいます。ワンエイトプロモーションのS元は一生許さない。

野鳩 第12回 公演『君は人のために死ねるか』

  • 2007年3月14日(水)~18日(日)〈全7ステージ〉
  • 下北沢 駅前劇場

活動休止前、最後の公演。登場人物たちが様々な死にまつわる物語世界を横断する構成。もう本当にやる気が枯れ果てて「演劇やりたくない」という気持ちを押し殺してなんとか作った作品。上演時間は60分にも満たなかった。実は半年後にも同じ駅前劇場で公演する予定だったんだけど、無理を言ってキャンセルさせてもらってます。高校から始めた演劇だったけど「まさかやりたくなくなるとは」と思ってました。この後、半年ほどして東京の部屋を引き払い実家に戻ります。当時29歳。なんか暗い感じですが、作品の雰囲気はともかく構成自体は悪くないので最後まで諦めなかったんだなと思います。

野鳩とナカゴー『ひとつになれた』

  • 2013年1月17日(木)~22日(火)〈全9ステージ〉
  • 下北沢 OFF・OFFシアター

重く暗い6年の休止期間を経て、活動再開の公演をナカゴーと合同で。野鳩とナカゴーの自分勝手な役者たちによる合同公演。振り回される演出・水谷。その本番直前の舞台稽古に人食い宇宙人が現れ状況が一変するモキュメンタリーパニック演劇。一応、脚本鎌田、演出水谷という担当だったけど、みごとに混じり合ってます。鎌田君の台本がなかなか遅くて、前半の膨大なセリフを覚えきれないまま舞台に出てました。毎ステージ、開演直前までセリフ入れてた。この合同公演は僕からの提案でした。活動休止中に上京してナカゴーの『町屋の女とベネディクトたち』を観たんです。そしたら一週間ぐらいナカゴーのことが頭から離れない。ずっとナカゴーのことを考えてしまう。本当に本当に面白くて、しかも野鳩を観て旗揚げしたというのがうれしくて。演劇は二度とやらないと思っていたけど、気づけば合同公演の打診をしてました。ナカゴーがいなかったら野鳩の活動再開は確実になかったです。鎌田くんからのプレゼントみたいな素敵な作品でした。

野鳩『村にて』

  • 第24回下北沢演劇祭参加作品
  • 2014年2月13日(木)~16日(日)〈全6ステージ〉
  • 下北沢 OFF・OFFシアター

活動再開後、初の単独公演。以前の野鳩のような中学生のすこしふしぎ物語は無理だよね、というのがメンバーの総意で。だったらどういうものを作ろうかと、前期野鳩の特徴(と言われたもの)をみんなで洗い出し、新しい形を考えました。台本の執筆も、以前は構成を時間割してから執筆してたけど、それも敢えて無視。結果、初日を終えたら上演時間が2時間20分でした。OFF・OFFで。長過ぎ。どおりで書いても書いても終わらないわけだ。離れ小島の閉鎖的な村社会に都会から来た妊婦が順応できず苦しむ話。音響さんが見つからなかったので、出番でない役者が生音で効果音や音楽を演奏する演出にしました。物語自体は好きだし、効果音演出もよかったけど、以前の野鳩を求めていたお客さんは戸惑う、通好みな作品に。映画『ドッグヴィル』みたいに何もない空間に背景が見えてきて、なかなかよかったんですけどね。長いけど。

野鳩『自然消滅物語』

  • 2014年9月18日(木)~28日(日)〈全10ステージ〉
  • 市田邸(国登録有形文化財建造物)

前回、行き届かなかった部分もあったんでリベンジしたい、と急遽企画した公演。なので空いてる劇場が見つからず古民家でやることになりました。会場でお酒を販売したり、なんか畳で居心地いいし、結果オーライでした。これはめずらしくタイトル先行で決まった演目。映画『もらとりあむタマ子』の最後のセリフが自然消滅で。なんか、なつかしくていいなと。そこからシャンプーの名前みたいな題名にしたいな思ってこれにしました。ちょうど、別役実の本を読んでたんで、不条理劇に。タイトルから筒井康隆の『残像に口紅を』が思い浮かんで。未読だけど内容は知ってたので、そこから発想していきました。「物語」と冠してるけど、野鳩で唯一ストーリーがない演目かもしれません。設定と仕掛けのみ。笑いと切なさのバランスもよく完成度高いし、後期野鳩では一番好きな作品です。

野鳩『成島と泉』

  • Crackersboat「flat plat fesdesu Vol.3」参加作品
  • 2014年10月15日(水)~21日(火)〈全3ステージ〉
  • こまばアゴラ劇場

ダンサーのKENTARO!!くんに誘ってもらった、ダンスと演劇と音楽のフェスの参加作品。泉に写る自分の顔の美しさに見とれ続ける成島とダサい男女の恋愛模様を描いた作品です。『自然消滅物語』が終わってから約2週間でゼロから構想して完成させた30分の短篇。短期間で作った割には新しい試みもありクオリティも高いと思います。公演中、東京ELECTROCK STAIRSのダンスがタダで観れて、楽しかったのにあっという間に終わってしまいました。このフェスの打ち上げで他劇団の主宰者に作品の感想を求められた時、正直に「生理くさかったです」って言ったら、あからさまに不快な顔されて「野鳩は精液くさいですね」って言い返された。ここで重要なのは「精子」ではなく「精液」という言葉を選択した彼女のセンス。そのこだわりのチョイスもまた「生理くさいな」と思ったのでした。最後に若い女性に思いっきり嫌われた公演。作品は生理くさかったけど、ぼくはあなたのことかわいいと思ってました。

野鳩 と しまおまほ『はたらくおやつ』

  • 2015年3月4日(水)~8日(日)〈全7ステージ〉
  • 下北沢 OFF・OFFシアター

出演を渋るしまおさんを口説いて原作もお願いした合同公演。前回公演直後に妊娠を告白されまして、じゃあそれ込みの内容にしようと。女の一代記ものをやりたいというアイデアもありましたが、内容が生理くさかったので却下。出産退職する社員が勤めているオフィスの一日を多面的に見せる喜劇に落ち着きました。しまお原作っていってもそのまま使ったものはほとんどなくて、原作からエッセンスを取り出してしまおさんになったつもりで書きました。この公演の一番のトピックといえば、しまおさんの降板。野鳩にとっても出演者降板は初めての体験。初日の場当たり中にしまおさんが出血を訴え病院へ。本番3~4時間前に切迫早産でドクターストップ。結局ぼくが代役することになりました。3週間ぐらい前に「演技できません、アドリブでやらせてください」ってメール来た時は激昂したけど、そのおかげでセリフ覚えの悪いぼくでも対応できたんで、色々きれいに収まった感じです。個人的に、有りものや固有名詞を雑に扱って笑いをとってるものが苦手で。その手つきの品のなさが透けて見えた瞬間に引いてしまうんです。なので野鳩ではあえてそれらを使わない方向でやってきたんですけど、この作品は原作ものってこともあってその禁を破ってます。

野鳩『ある計画』

  • 2015年9月23日(水・祝)~27日(日)〈全7ステージ〉
  • 千本桜ホール

異色作と呼ぶ声が多かった作品。自分的には普段と変わりなく、いつも通りに作ったつもりだったんですけど。スタンドバイミー的前半が、主人公の執筆する自伝小説だったことが明かにされ、過去の記憶をめぐる物語になっていく、という内容。完全に素舞台だったので、音響照明で見せるためになかなかシビアなきっかけがテンコ盛りの演出になりました。とにかく台本に苦しみました。元々自分は劇作家タイプではなくて演出家タイプだと思っていて、最近それを本当に痛感します。執筆、しんどい。本当にしんどい。演出、たのしい。あと、全然お客さんが来ない公演でした。よく知らない劇場でやるもんじゃない。この公演が終わって数日後、急転直下で解散が決まります。青天の霹靂。最終的に解散という判断をしたのは自分だけど、それが決まってからは感傷に浸る隙もないくらい、公演のために動いてました。休むひまもなく、野鳩最後の公演に向けて準備が進んでいきます。

野鳩 -解散公演-『野鳩』

  • 第26回下北沢演劇祭参加作品
  • 2016年2月25日(木)~28日(日)〈全5ステージ〉
  • 下北沢 駅前劇場

解散公演です。まだこの文章を書いている時点では台本が完成していません。どうでした? 解散公演。楽しんで頂けましたか? 無事、駅前劇場の客席は埋まったんでしょうか。活動再開後、最も客席数が多い公演です。チケット代や手ぬぐいなど、ホント採算度外視なんで黒字は難しいだろうな。ぼくは最後のカーテンコールでどんな挨拶をしたんでしょうか。どんな顔をしてたんでしょうか。多分、泣きはしないだろうけど、やっぱり感慨深いと思います。これで野鳩の全公演の解説は終わりです。途中6年も休んでるので、公演数は少ないですが、20代前半の頃から中年になった今まで、みんなでなんとか続けてきた劇団です。そこそこの評価と、そこそこの集客力。結局売れることはありませんでした。そんな劇団の最後の公演に足を運んで頂き本当にありがとうございます。ふとした瞬間に少しだけでも野鳩のことを思い出して頂けるなら、こんなにうれしいことはありません。それでは。